アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 鈴田 尚子先生「未来型医療とクラウド技術-Amazon Web Servicesによる医療課題解決の取組み-」を開催しました
12月11日(水)18:00-19:00、今年度第8回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS 融合セミナー(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター統括本部 ヘルスケア事業本部 アカウントエグゼクティブ 鈴田 尚子先生の講演会をオンラインにて開催致しました。
今回の講演では、クラウド技術が医療分野の課題をどのように解決しうるかについて、技術の特徴や具体的な導入事例をもとにご紹介いただきました。
講演の冒頭では、鈴田先生が医療に関する課題解決に関心を持った経緯をご紹介いただきました。鈴田先生は、海外勤務時、日本の国民皆保険制度の希少さと重要性を認識された一方、現地で知り合った医療従事者たちとの交流から、日本の医療が医療従事者の責任感や自己犠牲に依存している現状に課題意識を持つようになりました。その後、コンサルティングファームや製薬企業での業務経験を経て、医療情報を安心・安全な形で共有・流通できないこと、様々な医療現場の課題のボトルネックや、アンメットニーズの原因になっていると感じられ、クラウドに興味を持つようになったこと、現在のAWSでの取り組みにつながっていると教えていただきました。
次に、クラウド技術の特徴をご説明いただきました。クラウドの利点としては、運用コスト削減のみならず、システム開発のスピード、柔軟なシステム構築や、災害・サイバーセキュリティ対策の強化、CO2排出量の削減などの利点が挙げられるとのことです。従来のオンプレミス型システムと比較して、クラウドは必要なリソースを迅速かつ柔軟に調達でき、医療分野においても、人口動態の変化やシステムの再編に臨機応変に対応できることから多様な分野で採用されていると説明頂きました
続いて、クラウド技術を医療分野に適応する具体的なユースケースをご紹介いただきました。ご講演では、①AIによる働き方・業務効率向上、②医療データ利活用の推進、③遠隔医療・地域医療資源の最適配置、④医療従事者による起業、⑤データドリブンの病院経営、⑥セキュリティ人材不足の解消、⑦災害対策・災害医療への応用、という7つを例示していただきました。実際の事例として、米国の医療機関で、AWS上で医療情報システムを統合し、業務効率化やデータ利活用の推進、コスト削減及びゼロトラスト型のセキュリティ対策を実現した事例、国内において、県内の病院や介護施設間で情報をクラウドで繋ぎ、地域医療ネットワークを構築した事例、さらに、生成AIによる院内文書作成効率化や、声をカルテ化するAIツールによる働き方改革支援、医薬品開発に関する特許出願書類の作成効率化の事例、創薬において、タンパク質と化合物の組み合わせをシミュレーションするバーチャルスクリーニングの効率化の事例、生活習慣含むペイシェントジャーニーを360度可視化し、早期診断や治療継続率改善を実現したプラットフォームの事例、業界初となるブロックチェーン技術を活用しドラッグロス解消を目指す治験プラットフォームの事例等ご紹介いただきました。これらの事例から、クラウド技術が様々な場面の課題解決に活用される可能性をお示しいただきました。
最後に、クラウド技術は現場の課題意識「Insight」と掛け合わせることで 「Innovation」に繋げることができるとご説明いただきました。柔軟かつ迅速なシステム構築が可能なクラウド技術は、未来型医療の実現において重要な役割を果たしていくものと考えられる、とのメッセージでご講演を締め括られました。
本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外457名の方々にご参加いただきました。
鈴田先生、ご講演いただきありがとうございました。
文責:医学系研究科 博士前期課程2年 内田彩希