研修医・学生の方へ

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研究について

当科で行っている研究の概略を下記に記します。それぞれの専門領域について、多くの研究講座・施設と共同で基礎および臨床研究を展開しています。

脳血管障害
東北地方は全国的にも脳梗塞、脳出血、くも膜下出血をはじめとした脳血管障害が多い地域であり、患者さんの生命予後や機能予後の改善を達成するべく、当科設立時から盛んに研究がなされてきました。
臨床研究では、近年、東北大学が中心としてとりまとめた、くも膜下出血の治験の成果が認められて、新規薬剤が承認となりました。新薬にも対応した、新規に定めた東北大学くも膜下出血管理プロトコルも、全国へ広がりつつあります。また、当科初代教授の鈴木二郎先生が命名した、もやもや病についても継続した研究がなされており、もやもや病に対する血行再建術後の、脳循環における変化について、多くの成果を収めてきました。
基礎研究では、もやもや病疾患感受性遺伝子を初めて同定し、遺伝子改変マウスを用いた研究や、患者由来のiPS細胞を用いた研究を行っています。原因不明の難病であるもやもや病の病態解明に向けて、日々邁進しています。また、脳血管疾患に対する新規の治療として、神経再生医療に関する研究にも力を入れています。再生医療の項目で詳細は記載していますが、これらの治療薬の詳細なメカニズムや、新たな疾患への応用について検証を行っています。
この他にも、硬膜動静脈瘻や脳動静脈奇形、頚部内頚動脈狭窄、血管内治療など、日本有数の歴史と圧倒的な症例数を誇る当科では、脳血管障害全般にわたり臨床・基礎両面から研究を展開しています。
脳腫瘍
当科では、脳腫瘍患者さん治療成績の向上を目指した研究を幅広く行っています。患者さんの同意のもと、手術により摘出した脳腫瘍の遺伝子解析をおこない、脳腫瘍の原因、病態解析を行っています。その結果、特定遺伝子の異常をもった患者さんにおいては抗がん剤の効果が高いことが示され治療に応用されています

再生医療
Muse細胞とは
Muse細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring Cells)傷害を受けた組織へ自ら移動し、その組織に応じて適切な細胞へ自発的に分化し、組織の修復を行う多能性幹細胞です。当科では、中枢神経疾患である脳梗塞や脊髄損傷に対するMuse細胞を用いた神経再生治療の開発に取り組んでいます。

脳梗塞に対するMuse細胞治療
超高齢社会の中で、脳梗塞の患者数は増加の一途をたどっています。脳は再生能力に乏しく、多くの患者さんが後遺症を抱えますが、リハビリテーションでの神経機能の回復には限界があります。そこで私たちはMuse細胞を用いて梗塞後の神経細胞を再生する基礎研究・臨床研究を進めてきました(Figure 1)。
当院で実施した第二相臨床治験では、Muse細胞製剤が亜急性期の脳梗塞患者に対して安全で効果的であることが示されました。この治験では、脳梗塞発症後14日から28日以内の患者35名にMuse細胞製剤または偽薬を投与し、52週間にわたり安全性と機能回復の効果を検証しました。その結果、Muse細胞製剤を投与されたグループでは、より多くの患者さんが日常生活を自立して行えるレベルまで改善し、特に上肢の運動機能に顕著な改善が見られました(Figure 2)。

脊髄損傷に対するMuse細胞治療
脊髄損傷に対しても、Muse細胞治療の研究が進行中です。脊髄損傷は運動や感覚機能に重度な障害を引き起こし、現在の治療法では完全な回復が困難です。当科の基礎研究では、Muse細胞が脊髄損傷においても神経細胞やアストロサイトなどに分化し、機能回復を促進することが確認されました。

今後の展望
東北大学脳神経外科は、脳梗塞や脊髄損傷などで苦しむ患者さんの神経機能の改善と生活の質の向上に貢献するために、Muse細胞による治療法の開発、研究にますます注力してまいります。
Figure 1:

静脈から投与したMuse細胞が脳梗塞に集まり、神経細胞に分化しています。

Muse細胞投与により、脳梗塞患者の上肢麻痺に有意な改善が見られました。
医療AI研究
近年、AI(人工知能)によって医療の質の向上を目指す「医療AI」という取り組みが、急速に広がっています。診断、治療、医薬品開発、介護など、利用領域は多岐に渡りますが、特に画像診断支援の分野において、AIの活用が進んでいます。2022年4月からは、「AIを用いた画像診断補助に対する加算(単純・コンピュータ断層撮影)」が、保険適用されるようになり、医療AIのさらなる広がりが期待されています。
また、臨床の現場だけでは無く、細胞や動物を使った基礎実験の分野においても、実験データの解析にAIが役立っています。
当教室では、東北大学clinical AIと連携し、脳神経外科領域の医療課題を、AIの技術を用いて解決するための研究を行っています(東北大学clinical AIについてはこちらhttps://www.shp.hosp.tohoku.ac.jp/Clinical_AI/)。
当教室で現在行っている研究の一部をご紹介します。

  1. 患者さんの背景情報(年齢、性別、今までに罹った病気、飲んでいる薬、など)、検査情報(血圧、心拍数、身体所見、血液検査、画像検査、など)、治療情報(手術、投薬、など)を統合・解析し、合併症が起きる確率や、退院時の転帰などを、高い精度で予測する研究
  2. 大量の画像データを読み込み、深層学習技術を用いることで、病気の診断や手術支援を行うシステムの開発研究
  3. 脳腫瘍の基礎研究で集めた遺伝子情報を、クラスタリング技術を用いることで可視化・分類し、その特徴を抽出する研究

医療AIを使うことで、医療の質が上がったり、効率が上がったり、コストが下がったりすれば、患者さんにとっては大きなメリットとなります。そろばんや計算機がパソコンに変わり、公衆電話が携帯電話、そしてスマートフォンへ変わっていったように、医療AIも、気づいたら当たり前に使われるようになる未来が、すぐそこまで来ています。医療AIが、医療現場において欠かせないサポート技術の一つとなれるよう、日々研究に励んでいます。

頭部外傷(外傷性脳損傷)
・ビッグデータ解析の手法を取り入れた二次侵襲のコントロール(企業・産総研・高度救命救急センター)
・タブレット端末を用いた集中治療管理の標準化・データベースの質の保証(企業・産総研・東京電機大・高度救命救急センター)
・爆風脳損傷における脳損傷機序解明(東北大学流体科学研究所・米国Walter Reed Army Medical Center/ Institute of Research・東京大)
・国際基準データベース登録に基づく課題抽出(放射線科・高度救命救急センター)
・頭部外傷後の睡眠障害(高度救命救急センター・スタンフォード大)
カリフォルニア大学サンフランシスコ校脳脊髄外傷センター、Walter Reed Army Medical Center / Institute of Researchをはじめとした頭部外傷分野のトップセンターと連携するとともに、分野横断型医工学連携プラットフォーム(http://basic.umin.jp)をはじめとした幅広いネットワークを駆使することにより、とくに本学のつよみを生かし、課題解決による産業化、医療政策に関わることにリサーチフォーカスを置き、広い視野でプロジェクトの推進を図っています。

てんかん外科
・小児難治てんかんに対する非切除的外科治療の効果(小児病態学分野)
・高磁場MRIによるてんかんの画像診断(放射線診断学分野)
・頭蓋内脳波による高次脳機能マッピング(高次脳機能障害科、てんかん科)
・脳波の数理学的解析による新しい診断法およびモニタリング技術の開発(てんかん科)
・光遺伝学(optogenetics)を応用した動物てんかんモデルの開発
てんかん科・小児病態学分野・高次脳機能障害科・放射線診断学分野などと共同で、てんかんの新しい診断技術、脳機能マッピング、外科治療予後に関する研究を行っています。

基礎研究としては、光感受性イオンチャネルを用いた世界で初めてのけいれん発作モデルを開発・発表し、てんかんの病態解明と治療応用を目指しています。光遺伝学(optogenetics)は光によって神経機能を操作する技術で、現在神経科学分野で最も注目されている分野の一つです。

良性脳腫瘍・頭蓋底外科
・遺体をもちいた手術手技修練ならびに微小解剖実習の開催(年一回)
東北大学は、厚生労働省の規定する“実践的な手術手技向上研修事業実施団体”全国6施設の一つとして認定されています。
・新規手術治療機器(ジェットメス)の神経内視鏡手術への応用開発

医療機器・ソリューション開発
神経・血管温存下に最大限の病変摘出を行う手術用治療器(パルスウォータージェットメス)の開発
http://www.rpip.tohoku.ac.jp/seeds/profile/312/lang:jp/

外科的手術・処置では、患者さんの生命予後や疾患コントロールを最大化する観点から病変の最大限の摘出が求められます。その一方、手術・処置後の患者さんの機能、さらには生活の質を維持するためには病変内や近傍の血管や神経を温存することが求められます。その一方、両者を両立することはしばしば困難でした。私たちはウォータージェットが熱損傷を生じることなく、組織選択性をもつことに注目し、この二つの要素の両立を支援する新しい手術用医療機器(パルスウォータージェットメス)として、これまで企業、学術機関と共同研究を脳神経外科領域だけでなく、さまざまな領域(脊椎脊髄外科 / 消化管外科 / 泌尿器科 / 心臓血管外科 / 眼科 / 形成外科 / 皮膚科 / 歯科)で非臨床試験、臨床試験を実施してきました。


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