ジャーナリスト 浜田敬子先生「日本の少子化問題・労働力不足問題の本質とは何か」を開催しました
2月21日(水)18:00-19:00、今年度第10回目の未来型医療創造卓越大学院プログラムFM DTS 融合セミナー(共催:臨床研究推進センターバイオデザイン部門・医工連携イノベーション推進事業)ジャーナリスト/前Business Insider Japan統括編集長/元AERA編集長 浜田 敬子先生の講演会をオンラインにて開催致しました。
今回の講演では、日本に迫る労働力不足危機の実情と、背景に潜むジェンダー不平等についてお話し頂きました。人口減少やパンデミックの影響から、日本の農業、建設や物流、介護業界では人手不足が深刻化しています。今後は警察、消防、教師など生活のインフラを支える職種でも人手不足が加速する一方で、ホワイトカラー部門は労働力が余ることが予想されると述べられました。日本は賃金の低さ故に国際的人材の争奪戦に負けるだけでなく、女性が労働市場で正当に評価されていない社会構造が、若い世代の経済的不安に繋がっていると指摘されました。根深く存在する性別役割分業やアンコンシャス・バイアスが、公正な採用や評価を妨げ、女性の非正規雇用率の高さにも影響していることから、ジェンダー不平等の解消が労働人口減少危機の解決の糸口となると考えられています。
世界では今、多様性の本質への理解が浸透し、「ダイバーシティ、ジェンダー平等は企業の成長にとって不可欠である」という考えが定着しつつあると同時に、ビジネスと人権の観点からもジェンダー平等は実現しなければならないと認識されています。多様なニーズに応えるには多様な人材が組織には必要であるだけでなく、同質性の高い組織は集団浅慮や経路依存症といった企業にとってリスクにもつながります。組織にとってダイバーシティがなぜ必要なのか、本質的な理解が進んでいる企業(日本ロレアル、メルカリ、仙台銀行など)を例に挙げ、経験による能力格差を減らす取り組みや、性別によるジョブローテーションを見直す取り組みなどを説明されました。
さらに、世界的に見るとジェンダー後進国である日本では、自然に女性の管理職や経営層が増えるのを待つのではなく、世界的には多くの国で取り入れられている目標値を決めて女性を一定数割り当てるクオータ制の導入を義務化する必要があると述べられました。「女性活躍」を謳いながら、「年収の壁」を温存しているような矛盾した公共政策を見直し、男性には両立支援制度をもっと利用しやすくするようにし、女性にはキャリアを支援する均等支援を行うことが重要だと話されました。講演参加者からの「ジェンダー不平等の声を上げると逆差別だと指摘される」というコメントに対し、個人で批判を受け止める必要はなく社会全体がコンセンサスを取ることが必要不可欠だという力強いメッセージで締められました。
なお本講演会は、卓越大学院プログラムに参加する学生の他、企業の方を含む幅広い領域から学内外409名の方々にご参加いただきました。
浜田先生、ご講演いただきありがとうございました。
文責:角南沙己(東北大学理学部 地球惑星物質科学科4年)