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留学体験記

真貝 勇斗 Shingai Yuto

米国 Weill Cornell Medicine, Department of Pathology and Laboratory Medicine
Teresa Sanchez lab

留学で得た経験と人脈は一生の財産に


1 留学先で行った研究について教えてください
ラボの研究テーマは、Sphingosine-1-phosphate (S1P)という脂質メディエーターの血管内皮細胞への作用、それを介した脳微小循環における脳血液関門への影響を解明する事です。S1Pのメディエーターとしての作用は主に5種類の受容体、S1PR1-5によって調整されており、受容体の種類によっては全身に広く分布するものもあれば、臓器特異的なものもあります。その役割は、種々の細胞の増殖や遊走、また血管機能や血管内皮のバリア機能の調節など、多岐にわたっています。中でも、リンパ球と血管内皮細胞に特に発現するS1PR1とS1PR2に主眼を置き、研究を行っていました。
 この二つの受容体は、血管に対する作用としては拮抗的に働きます。具体的には、血管内皮細胞におけるS1pr1をノックアウトしたマウスでは脳損傷後の血管透過性がより亢進、損傷が大きくなるのに対しS1pr2のノックアウトは脳保護的に働きます。細胞障害時におけるS1pr1の活性化、もしくはS1pr2の不活化はそのメカニズムから多くの脳外科疾患においてprimary brain injury、secondary brain injuryの抑制に働くと想定されます。実際に先任の先生方の仕事からも、マウスのSAHモデルや脳梗塞モデルなどでその効果が実証されています。これらを踏まえ、血管内皮細胞におけるS1pr2ノックアウトマウスやS1pr2をターゲットとする分子標的薬を使用して、S1pr2による血管内皮調整が脳梗塞や敗血症に及ぼす影響について、in vivoでの実験を中心に研究を行なっていました。

2 留学先で大変だったことは何ですか
円安と食事のクオリティが低いこと。アメリカで働く人々は少しでもできることがあれば、自信を持ってできると言い切るのでそのギャップに困ったこともある。(メンタル的に見習ったほうがいい部分もあると思う)

3 留学を経験して良かったことは何ですか
完璧な英語など話す必要はなく、言いたいことを懸命に伝えればdiscussionがいくらでもできると気づけたこと。日本人同士でも外人でも、全くの他職種の方々と交流を持つ機会が多く、自分の人脈であったり様々なものの見方が大きく広がったこと。

4 これから留学を考えている先生に向けてアドバイスをお願いします
英語ではニュアンスだけ伝えたり結論をはぐらかすような話し方はあまりない(自分ができないだけという面もある)と思うので、自分の思うことをはっきりと伝えなければ、何もdiscussionが生まれない場面も多くあると思います。なので、いつでも自分がどう思うかや生じた疑問を口に出さずとも心の中で常に持っておくと、留学中も普段は出会えない多くの人と意見を交換したり仲良くなれると思います。

5 脳外科を目指す先生に向けてメッセージをお願いします
脳という臓器はヒトが生物の中でもヒトであることに大きく寄与していると思います。勉強しても勉強しきれない奥の深さが臨床でも研究でも数多く存在し、それらに対して手術等の介入を含め様々なことができる唯一の診療科だと思います。少しでも興味があれば、是非一緒に働きましょう。

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