患者さんへ

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脳血管障害

脳動脈瘤

脳動脈瘤について:

脳動脈瘤は人口の約3%に見つかると言われており、頭痛の精査や脳ドックなどでMRIを撮ったことで偶然に発見されることも多くあります。破れていない脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤と呼ばれ基本的に無症状ですが、破裂するとくも膜下出血を発症します。くも膜下出血になると約1/3が死亡し、約1/3が後遺症を残してしまいます。このため、破裂する可能性が高いと考えられる未破裂脳動脈瘤については予防的に治療されることもあります。

脳動脈瘤の治療について:

未破裂脳動脈瘤が見つかったからといって、必ずしも破裂する訳ではありません。日本人を対象としたUCAS Japanという我が国の大規模研究では、未破裂脳動脈瘤の平均破裂率は年間約1%とされています。ですので、経過観察も有力な選択肢となります。破裂するリスクの高い動脈瘤を見分けることが重要になります。
脳動脈瘤の治療には大きく分けて開頭クリッピング手術と脳血管内治療があります。開頭クリッピング手術は従来から行われていた方法で、開頭して顕微鏡で脳動脈瘤を直接観察して基部をクリップで閉鎖する方法です(図1)。
脳血管内治療は近年著しく発展し、我が国の半数以上の動脈瘤が治療されるようになっています。開頭せずに大腿の動脈からカテーテルという細い管を脳動脈瘤まで進め、コイルを留置して血液が脳動脈瘤内に入らなくする方法です(図2)。コイル塞栓術の他には、脳動脈瘤内にコイルを入れずに治療するフローダイバーター留置術という比較的新しい治療法があります。

当施設の脳動脈瘤治療体制について:

当施設には国内トップレベル経験と技術がある開頭クリッピング医と脳血管内治療医の双方が在籍しており、患者さんの動脈瘤に最も適した治療法(経過観察も含む)を提案します。

脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻

脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻について:

脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻は共に、動脈からの血流が正常な毛細血管を介さずに静脈に流れ込んでしまう疾患です。

脳動静脈奇形について:

脳動静脈奇形の血管壁は正常な脳血管に比べて薄くなっていることも多く、破れると脳出血になります。また、けいれん発作の原因になったり、強い頭痛の原因となっていることもあります。比較的稀で高い治療技術が必要とされる疾患であり、薬物療法を含めた集学的治療戦略を立てることが重要になります。

硬膜動静脈瘻について:

硬膜動静脈瘻は頭蓋骨の内側で脳を包む硬膜を栄養する動脈血が脳静脈に逆流し、さまざまな病態を引き起こします。脳静脈が破れると脳出血になりますし、逆に脳静脈の流れが悪くなり静脈性脳梗塞になることもあります。他にも、けいれん発作の原因になったり、複視(ものが二重に見える)に原因になったり、強い耳鳴りや強い頭痛の原因となったりします。

当施設の脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻治療体制について:

比較的稀な疾患ですが、当施設では国内トップレベルの経験と技術がある開頭術医、脳血管内治療医が在籍しており、定位放射線治療も組み合わせて患者さんの脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻に最も適した治療法(経過観察も含む)を提案します。

もやもや病

「もやもや病」は、内頚動脈終末部に狭窄・閉塞をきたし、その周囲に「もやもや血管」と呼ばれる側副血行路が出現する原因不明の疾患です。「もやもや血管」は血流不足を補う目的で代償性に発達する血管構造だと考えられています。つまり、「もやもや血管」は脳に血流を送る重要な通り道になっているのです。小児から若年成人に多いことが特徴ですが、最近では高齢者にも見つかることがあります。進行すると脳梗塞脳出血を合併し、後遺症を残すこともある疾患です。「もやもや」という日本語的表現に親近感を覚える病名ですが、この病名は「Moyamoya disease」として全世界的に通じる病名です。「もやもや血管」は、「もやもや」とタバコの煙が立ち上る様に似ているため、そのように名付けられました。東北大学脳神経外科の初代教授である鈴木二郎先生が命名し、全世界的に広がった病名であり、仙台に縁の深い疾患です。

(1)もやもや病の遺伝子

もやもや病の病態が進行すると、脳梗塞脳出血を合併します(図1)。内頚動脈の血流が悪くなるにつれて、もやもや血管が発達しますが、もやもや血管からの血流が不十分な場合には脳梗塞を起こします。もやもや血管の発達過程において、もやもや血管に微小動脈瘤が形成され、これが破裂すると脳内出血を起こすこともあります。無症状のうちはもやもや病とわからず、脳梗塞や脳出血を合併して初めてもやもや病と診断されることが大半です。通常、脳梗塞や脳出血は動脈硬化を有する高齢者に多い疾患ですが、もやもや病を原因とした脳梗塞や脳出血は若年に発症します。もやもや病が発症しやすい年齢層は小児や若年成人(40歳前後)であることが良く知られています。また、欧米に比べて本邦をはじめとする東アジア諸国(日本・韓国・中国)に多く見られる疾患です。また、家族歴を持つ場合が比較的多く(約15%)、遺伝的要因の存在が想定されてきました。その後の研究により、東北大学と京都大学から”RNF213”が疾患感受性遺伝子として近年同定されました。もやもや病患者の多くが同遺伝子を有し、特にもやもや病の家族歴を有する場合には極めて高率に保因することがわかりました。しかし、この遺伝子を有するだけではもやもや病を発症するとは限らず、遺伝的要因に加えて様々な環境要因が加わることで発症することが想定されています。

(2)もやもや病の治療

もやもや病は脳血管で最も太い内頚動脈終末部の血流不全に起因する疾患であり、血流不全から脳梗塞を合併することがあります。脳血流を改善するための薬剤(いわゆる血液サラサラの薬)を使用しますが、決して特効薬とは言えません。そこで、もやもや病が脳梗塞を発症した場合には、現在では手術治療が第一選択と考えられています。手術では、頭皮を栄養する血管を脳内の血管に結ぶ(吻合といいます)、バイパス手術が標準的な治療方法です(図2)。バイパスとは一般的に、市街地などの混雑区間を迂回・短絡するための道路を指します。脳血管のバイパスも同様で、もやもや血管の発達する内頚動脈終末部を混雑区間と見なし、その向こう側の血管に頭皮血管を吻合することで、混雑区間を避けて脳に血流を供給することが目的です。頭皮血管を使用したバイパス術を直接バイパス術と呼ぶことに対し、脳の表面に側頭筋(噛むための筋肉です)を接着することにより、側頭筋内の毛細血管を脳表に発達させて脳血流を改善する手法を間接バイパス術と呼びます。現在では、直接バイパス術に加えて間接バイパス術を併用することが一般的です。

(3)もやもや病での通院

もやもや病を発症し、上述したバイパス術を受けた場合、多くの患者さんは症状が改善し、通常の日常生活を送ることができます。ただし、手術前の脳梗塞や脳内出血が重篤であった場合には残念ながら後遺症を残す場合もあり、軽症のうちに手術を実施することが重要です。手術後は完全に安心かというと必ずしもそうではなく、手術と反対側の病状が進行して症状を出すこともあるため、定期的な通院が必要になります。半年〜1年に一度通院し、MRIなどの画像所見を観察し、もやもや病が進行していないかどうかを確認します。もやもや病進行の典型的な症状として、手足の一時的な脱力発作が有名です。この脱力発作は全身ではなく、多くは半身(右もしくは左)に起こることが多く、右脳の症状は左半身に起き、左脳の症状は右半身に起きることが特徴的です。また、息を吸ったり吐いたりする動作(過換気と呼びます)がきっかけとなり症状を出すことがあり、楽器の演奏や麺類を食べる際に症状を訴える患者さんもいます(図3)。これは、過換気が脳血管の収縮に関与し、過換気によって脳血流が低下してしまうことに起因します。従って、術前の患者さんには麺類の摂取や、楽器の演奏を控えるように指導することもあります。

頚動脈狭窄症

頚動脈狭窄症は、頚動脈の分岐部にプラークが蓄積する疾患です。脳梗塞を発症した際にみつかる場合や、糖尿病をお持ちの方で頚動脈の超音波検査やMRIを施行した際にみつかることがあります。血をさらさらにする薬の内服や、コレステロール・糖尿病の治療を行ったとしても、脳梗塞のリスクが高いと考えられる場合には、外科治療が必要です。外科治療の方法は、プラークを取り除く頚動脈内膜剥離術(外科治療)とステントを留置し狭窄部位を拡張させるステント留置術(脳神経血管内治療)があります。どちらの治療がよりよいかは、CT・MRI検査、超音波検査、脳血流検査、心臓の検査等の結果から、両者の治療に精通した脳神経外科医・脳神経血管内治療医が総合的に判断します。また、東北大学病院では、各診療科と連携した治療が可能です。例えば、視力低下や一時的に視野が真っ暗になるような眼症状で発症した頚動脈狭窄症も、眼科と連携して対応できます。また、徐脈や心機能低下等の心疾患をお持ちの場合も循環器内科と連携して治療にあたります。

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