患者さんへ

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脳腫瘍

神経膠腫(グリオーマ)

神経膠腫は原発性脳腫瘍の約30%を占め、腫瘍を構成する細胞の形態から、星細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫などに分類されます。また神経膠腫は、その悪性度により大きく4段階に分けられます。もっとも良性なグレード1は小児に多いとされる毛様細胞性星細胞腫で、手術で全摘出できれば治癒することが可能です。グレード2以上の神経膠腫は脳にしみこむように広がるため、手術だけでの治癒は困難であり、放射線治療や抗ガン剤(化学療法)を組み合わせた治療(集学的治療)が必要となります。なかでもグレード4の神経膠腫である膠芽腫は手術だけでは早期に再発することが知られており、手術後すみやかに放射線治療と化学療法を行います。

①手術

神経膠腫は正常の脳にしみ込むように広がるために、できた場所によっては無理な摘出は重大な合併症(麻痺(手足の動きの障害)、失語(言葉を話したり理解することの障害))を来たすことになりかねません。当科では安全な摘出を行い、かつ摘出率を向上させるために、覚醒下手術、術中ナビゲーション、脳機能マッピング、蛍光診断によるナビゲーションなどを行っています。

②放射線治療

悪性の神経膠腫に関しては放射線治療科との綿密な協力のもと放射線治療を実施しています。病変に応じて強度変調放射線治療(IMRT)をおこなっています。また切除不能な再発病変に対しては関連病院との協力でガンマナイフ治療やサイバーナイフ治療を行なっています。

③化学療法

初発悪性神経膠腫に関しては、症例によりますが2013年に保険適応となったギリアデルの留置を手術時に積極的におこなっています。これは腫瘍細胞がわずかに残存している摘出腔周囲に抗ガン剤をしみ込ませたポリマーを留置することで残存腫瘍の増殖を防ごうという試みです。また手術後は、放射線治療と併用でテモダールの内服あるいは二ドランの注射を行っています。これは放射線治療が終了後も引きづづき外来に通院しながらで1~2年継続します。再発時には2013年保険適応となったアバスチンを使用しています。これにより再発腫瘍の増大をくいとめるだけではなく、症状の改善を認める患者さんも認められるようになりました。

転移性脳腫瘍

東北大学病院では多数の科で“がん”の治療が実施されております。これら多数の癌種からの脳転移も当科で担当する疾患です。当科による手術摘出、放射線治療科による放射線治療、関連病院との連携によるガンマナイフ、サイバーナイフ治療の選択肢を適切に使用することで、可能な限り転移性腫瘍による状態の悪化を回避する治療を行っております。

小児脳腫瘍

1)外科的治療:症状の改善、腫瘍の根治や減量、組織診断の確立のために重要な第一歩です。当科では、ナビゲーション、術中MRI、神経生理学的モニタリング、神経内視鏡を併用して、合併症なく最大の治療効果を目指して治療を行っています。過去5年間の小児・AYA世代の手術件数を示しますが全国的に見ても有数の経験があります。


2)放射線・化学療法:放射線治療科や小児科と協力して、腫瘍の組織診断に応じた治療を定期的なカンファランスで情報交換をしながら、集学的な治療を行っています。また2019年から保険収載された『遺伝子パネル検査https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/knowledge/cancer_genomic_medicine/about.html』についても対応可能です。

3)治療後の経過観察:腫瘍の経過観察に加えて、小児脳腫瘍の治療後には内分泌障害、認知機能低下、不妊、てんかん、二次性腫瘍、脳血管障害など様々な問題が発生する可能性があります。これらに対し、小児科・内分泌内科・産婦人科・泌尿器科・リハビリテーション科・高次脳機能障害科・てんかん科などの多くの診療科と連携をしながら、経過を診ています。また神経心理士による知能・記憶・遂行機能の評価を定期的におこない、学習、進学、就職に関して相談、助言をしています。

4)日本小児がん研究グループでの活動
日本小児がん研究グループの活動に参加しています。現在患者さんを募集中の研究は以下の通りです。

  1. ・JCCG CNSGCT2021 初発中枢神経原発胚細胞腫瘍に対する化学療法併用放射線治療に関するランダム化比較試験 
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs051220066
  2. ・小児髄芽腫に対し新規リスク分類を導入したチオテパ/メルファラン大量化学療法併用放射線減量治療の有効性と安全性を検討する第II相試験
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs051200021
  3. ・非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍に対して強化髄注短期決戦型化学療法とチオテパ/メルファラン大量化学療法後に遅延放射線治療を行う集学的治療レジメンの安全性と有効性を検討する第II相試験
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs051200071
  4. ・小児がんサバイバーにおけるquality of lifeについてのwebアンケート調査
    http://jccg.jp/ccs-res/epro/

    他に成人を対象とした臨床試験も多く実施していますので、AYA世代の患者さんは『神経膠腫』のページも参照してください。

良性脳腫瘍

髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫に代表される良性脳腫瘍に対する手術治療を行っています。神経症状ならびに画像所見、さらには患者さんの年齢、家族構成や社会背景を吟味した上で、最適と考えられる治療方法を選択いたします。当科での治療における特徴は以下の通りです。

<診療協力体制>
放射線治療・診断科、眼科、耳鼻咽喉頭頚部外科、形成外科、リハビリテーション科、 高次機能障害科をふくめた多くの診療科との連携し、協力体制のもと診療・治療を行っています。さらに、古川星陵病院鈴木二郎記念ガンマハウス、広南病院脳神経外科と診療グループを形成し、症例ごとに適切な手術治療適応あるいは方法、さらにガンマナイフ放射線治療をふくめた多角的治療戦略について検討しています。

<脳血管内治療>
血管の中からカテーテルを用いて病変にアプローチする血管内治療は近年の治療機器の進歩により極細径の血管にアプローチすることが可能となっており脳神経外科領域でも欠かせないものとなっています。良性脳腫瘍においては摘出術前に腫瘍の栄養動脈を塞栓物質を用いて閉塞することで、手術中の出血量の低減や手術時間の短縮、ひいては摘出術の安全性や摘出率の向上につながります。当院では脳血管内治療指導医・専門医のみならず放射線技師や看護師ふくめ経験豊富なスタッフによる治療体制を構築しています。

<手術シミュレーション>
手術前のCT検査、MRI検査さらには血管撮影検査を統合し、すべての症例において3次元画像を構築しています。これにより病変と脳神経・血管との関係をより明瞭に可視化することが可能となります。正確かつ安全な手術計画作成が可能となるばかりでなく、患者さんやご家族によりわかりやすい説明を行うことが可能となります。

<手術支援>
手術ではニューロナビゲーターや術中神経機能電気生理モニタリング装置に代表される手術支援装置を駆使しより安全で確実な手術治療が施行できる体制を整えています。

<神経内視鏡>
神経内視鏡をもちいた手術を積極的に取り入れています。第三脳室底開窓術、脳室内腫瘍生検術に代表される神経内視鏡単独手術、さらに手術顕微鏡下手術に神経内視鏡を併用し手術を行っています。


movie (動画ファイル)

術前に行う画像検査を三次元融合することで腫瘍と周囲構造物との関係を可視化しシミュレーションすることができます。

術中ナビゲーションシステムを用いることで、術前に得られる画像検査から深部に存在する腫瘍や神経・血管など重要構造物の位置を顕微鏡の視野内に投影しながら手術を行うことができます。

間脳・下垂体腫瘍

広南病院脳神経外科に専門のスタッフを配し、日本でも有数の間脳下垂体疾患(下垂体腺腫、ラトケ嚢胞)の手術数を誇っています。内視鏡を使用した低侵襲手術にも積極的に取り組むとともに、正中部頭蓋底手術への拡大応用(拡大経蝶形骨洞手術)にも取り組んでいます。

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